生命の設計図を読み解く瞬間を捉えた！東京大学、RNAポリメラーゼIIがDNAを転写する様子を立体構造で可視化,東京大学

生命の設計図を読み解く瞬間を捉えた！東京大学、RNAポリメラーゼIIがDNAを転写する様子を立体構造で可視化

私たちの体は、数兆個もの細胞からできています。そして、その一つ一つの細胞の中には、生命の設計図であるDNAが詰まっています。このDNAには、タンパク質を作るための情報が書かれており、タンパク質は私たちの体を動かす様々な役割を担っています。

しかし、DNAの情報はそのままでは利用できません。そこで登場するのが、RNAポリメラーゼIIという特別な酵素です。RNAポリメラーゼIIは、DNAの情報を一時的にコピーする役割を担っており、このコピーされた情報（mRNA）をもとに、タンパク質が作られます。このDNAからmRNAをコピーする過程を「転写」と呼びます。

今回、東京大学の研究チームは、この生命の根幹をなす「転写」の瞬間、つまりRNAポリメラーゼIIがDNAを読み取り、mRNAを合成する様子を、なんと立体構造で可視化することに世界で初めて成功しました！これは、生命科学の分野において非常に画期的な成果と言えます。

一体何がすごいのか？

これまでの研究で、RNAポリメラーゼIIが転写を行うことは分かっていましたが、その詳細なメカニズム、特にどのような形でDNAと結合し、どのようにmRNAを合成しているのか、といった分子レベルでの動きは謎に包まれていました。

今回の研究では、最先端の構造解析技術であるクライオ電子顕微鏡を用いることで、RNAポリメラーゼIIがDNAに結合し、mRNAを合成しているまさにその瞬間を、原子レベルに近い精度で捉えることに成功しました。

具体的には、

RNAポリメラーゼIIがDNAのどの部分に結合し、どのような形でDNAをほどいているのか
RNAポリメラーゼIIがどのようにmRNAの材料を取り込み、どのように連結させているのか
RNAポリメラーゼIIがどのように転写の開始や終了を制御しているのか

といった、長年の疑問に対する重要な手がかりを得ることができました。

この成果がもたらす未来

今回の研究成果は、生命科学の基礎研究を大きく前進させるだけでなく、医療分野にも貢献する可能性を秘めています。

創薬への応用: RNAポリメラーゼIIの機能を阻害する薬剤を開発することで、がん細胞の増殖を抑制したり、ウイルスの複製を阻止したりする新たな治療法の開発につながる可能性があります。
遺伝子治療の効率化: RNAポリメラーゼIIの転写メカニズムを理解することで、遺伝子治療における遺伝子の発現をより効率的に制御することが可能になるかもしれません。
新たなバイオテクノロジーの開発: RNAポリメラーゼIIの機能を応用することで、新しいバイオテクノロジーの開発につながる可能性があります。

研究チームからのメッセージ

今回の研究成果について、研究チームは「生命の根源的なプロセスを解明することで、人々の健康と福祉に貢献したい」と語っています。

まとめ

東京大学の研究チームが成し遂げたRNAポリメラーゼIIの立体構造可視化は、生命科学の歴史に新たな１ページを刻む成果と言えるでしょう。この成果を基に、今後、様々な分野で革新的な進展が期待されます。私たちの未来をより良くしてくれるかもしれない、素晴らしい研究成果です。

補足情報

クライオ電子顕微鏡: 試料を極低温で凍結し、電子線を照射して観察する電子顕微鏡の一種。生体分子を自然に近い状態で観察できるため、構造生物学において重要な役割を果たしています。
mRNA（メッセンジャーRNA）: DNAの情報を基に合成されるRNAの一種。タンパク質合成の設計図としてリボソームに運ばれ、タンパク質が作られる際の鋳型となります。
酵素: 生体内で起こる化学反応を促進するタンパク質。

関連情報

今回の発表は、東京大学のプレスリリースだけでなく、関連する研究論文が科学雑誌に掲載されることによって、より詳細な情報が得られるようになるでしょう。また、他の研究機関や企業も、今回の成果を基に、さらなる研究開発を進めていくことが予想されます。

RNAポリメラーゼIIがゲノムDNAを転写する様子を立体構造で可視化