ヘテロクロマチンタンパク質による液-液相分離機構を解明, 東京大学

東京大学が解明！遺伝子の秘密を握る「ヘテロクロマチン」の不思議な動きとは？

私たちの体は、たくさんの細胞でできています。その細胞の中には、設計図のような役割を持つ「DNA」が入っています。このDNAは普段、「クロマチン」という状態になっていて、必要な時に必要な情報が取り出せるようになっています。

東京大学の研究チームが、このクロマチンの状態、特に「ヘテロクロマチン」と呼ばれる部分に着目し、その驚くべき動きを解明しました。ヘテロクロマチンは、遺伝子の働きを抑える役割があり、細胞が正常に機能するためにとても重要な部分です。

今回の発見のポイントは？

ヘテロクロマチンは「液-液相分離」という方法で、まるで油と水のように分離している！
- 「液-液相分離」とは、液体の中で、ある特定の物質が集まって、別の液体の層を作る現象です。ドレッシングを振った後、油と酢が分離するイメージです。
- 今回の研究で、ヘテロクロマチンを構成するタンパク質が、この「液-液相分離」によって集まり、遺伝子の働きを抑えるブロックを作っていることがわかりました。
「HP1α」というタンパク質が、ヘテロクロマチンの相分離をコントロールしている！
- HP1αは、ヘテロクロマチンに存在する主要なタンパク質の一つです。
- 今回の研究で、HP1αがまるで糊のように働き、他のタンパク質を引き寄せて、ヘテロクロマチンの相分離を促進することが明らかになりました。
HP1αの動きを制御することで、遺伝子の働きをコントロールできる可能性が！
- 研究チームは、HP1αの特定の部位を変化させることで、ヘテロクロマチンの相分離を調整できることを発見しました。
- これは、遺伝子の働きを人工的にコントロールできる可能性を示唆しており、病気の治療や予防につながるかもしれません。

なぜ、この研究が重要なの？

ヘテロクロマチンの異常は、がんや老化などの様々な病気に関わっていると考えられています。今回の研究によって、ヘテロクロマチンの動きの仕組みが明らかになったことで、これらの病気の原因解明や、新しい治療法の開発につながる可能性があります。

例えば、

がん治療: がん細胞では、遺伝子の働きが異常になっていることがあります。ヘテロクロマチンの動きをコントロールすることで、がん細胞の異常な遺伝子の働きを正常に戻し、がんの進行を抑えることができるかもしれません。
老化防止: 老化に伴って、ヘテロクロマチンの状態が変化することが知られています。ヘテロクロマチンの状態を正常に保つことで、老化の進行を遅らせることができるかもしれません。

今後の展望

研究チームは、今回の発見を基に、ヘテロクロマチンの異常がどのように病気に繋がるのか、さらに詳しいメカニズムを解明していく予定です。また、HP1αの動きを制御する新しい方法を開発し、病気の治療や予防に役立てることを目指しています。

今回の研究は、遺伝子の世界に隠された秘密の一端を明らかにした、画期的な成果と言えるでしょう。今後の研究によって、私たちの健康に大きく貢献することが期待されます。

関連情報

ヘテロクロマチン: DNAとタンパク質が複合体を形成した「クロマチン」のうち、遺伝子の働きが抑制されている領域。細胞の核の中に存在し、遺伝子の安定化や細胞の分化に重要な役割を果たしています。
液-液相分離: 溶液中で、異なる成分が混ざり合わずに分離する現象。近年、細胞内での様々な現象に関わっていることが明らかになってきました。
HP1α: ヘテロクロマチンに存在する主要なタンパク質の一つ。ヘテロクロマチンの形成や維持に関わっており、遺伝子の発現制御に重要な役割を果たしています。

この記事は、東京大学が2025年3月24日に発表した研究成果を基に、一般読者向けにわかりやすく解説したものです。専門的な内容については、原文をご参照ください。