神戸大学、AIで尿路感染症の原因菌を特定！「BiTTE®-Urine」が医療現場をサポート
2025年7月18日、神戸大学は、医療現場での尿路感染症の原因菌特定に革新をもたらす可能性のあるAIソフトウェア「BiTTE®-Urine」を発表しました。この新しい技術は、グラム染色画像という、昔から医療現場で使われている染色方法で得られた画像データをAIが解析し、尿路感染症の原因となる細菌の種類を、専門家と同等レベルの精度で識別できるというものです。
尿路感染症とは？そして原因菌の特定がなぜ重要？
尿路感染症は、膀胱炎や腎盂腎炎など、尿の通り道に細菌が感染して起こる病気です。発熱、排尿時の痛み、頻尿などの症状が現れ、重症化すると命に関わることもあります。
この病気を正確に診断し、適切な治療を行うためには、原因となっている細菌の種類を特定することが非常に重要です。なぜなら、細菌の種類によって効果のある抗生物質が異なるからです。例えば、ある抗生物質が効く細菌もいれば、全く効かない細菌もいます。原因菌を間違えると、治療がうまくいかず、症状が悪化してしまう可能性もあります。
これまでの原因菌特定の方法と課題
これまで、尿路感染症の原因菌を特定するには、患者さんの尿を培養して細菌を増やし、顕微鏡で観察したり、様々な検査を行ったりするのが一般的でした。しかし、この方法には時間がかかるという課題がありました。細菌が十分に増えるまで数日かかることもあり、その間、患者さんは原因菌に合った治療を受けられない場合があります。
AI「BiTTE®-Urine」の登場で何が変わる？
ここで登場するのが、神戸大学が開発した「BiTTE®-Urine」です。このソフトウェアは、グラム染色という、病原体を見るための基本的な染色法で得られた画像をAIが解析します。グラム染色では、細菌を染めたときの色の違い（グラム陽性菌は紫色、グラム陰性菌は赤色）や形、大きさなどから、ある程度の細菌の種類を推測することができます。
「BiTTE®-Urine」は、このグラム染色画像から、AIが膨大な数の画像データと照合し、尿路感染症の原因となる細菌の種類を、経験豊富な医療専門家と同等の精度で識別します。
この技術の最大のメリットは、迅速性です。これまで数日かかっていた原因菌の特定が、グラム染色画像さえあれば、より短時間で可能になることが期待されています。これにより、医師はより早く、患者さんに最適な抗生物質を処方できるようになり、早期回復につながる可能性が高まります。
専門医療職と同等の精度とは？
「専門医療職と同等の精度」という言葉は、このAI技術の信頼性の高さを物語っています。臨床検査技師や医師など、長年の経験と知識を持つ専門家が、グラム染色画像を見て原因菌を推定するのと同レベルの判断をAIができるということです。これは、AIが単なる補助ツールにとどまらず、専門家の判断を補強し、診断の質を高めることを意味します。
今後の展望と医療への貢献
「BiTTE®-Urine」の登場は、医療現場、特に細菌感染症の診断において、大きな進歩をもたらす可能性があります。
- 診断の迅速化: 迅速な原因菌特定により、早期の適切な治療開始が可能になります。
- 医療従事者の負担軽減: 専門的な知識と経験を要する原因菌の推定作業をAIがサポートすることで、医療従事者の負担を軽減できます。
- 医療格差の是正: 専門家が少ない地域や医療機関でも、AIの活用によって質の高い診断支援を受けられるようになる可能性があります。
神戸大学のこの画期的な研究は、AI技術が医療現場の課題解決にどのように貢献できるかを示す好例と言えるでしょう。今後、「BiTTE®-Urine」が実際に医療現場で活用され、多くの患者さんの健康に貢献していくことが期待されます。
グラム染色画像をAIが解析し、尿路感染症に関連する原因菌を専門医療職と同等の精度で識別 –細菌感染症菌種推定支援AIソフトウェア「BiTTE®-Urine」–
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