
地域再投資法の「2023年最終規則」が廃止へ:金融機関の地域貢献をどう変える?
2025年7月16日、連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board)をはじめとする複数の米国の金融規制当局は、連邦政府の「地域再投資法(Community Reinvestment Act: CRA)」に関する2023年の最終規則を廃止する共同提案を発表しました。この動きは、金融機関が地域社会への貢献をどのように行い、それをどのように評価されるかという重要な点に影響を与える可能性があります。
地域再投資法(CRA)とは?
地域再投資法は、1977年に制定された法律で、主に銀行などの金融機関が、低所得者層やマイノリティが集中する地域(指定地域)において、住宅ローン、事業用ローン、公共サービスへの融資など、地域社会のニーズに応じた金融サービスを提供することを奨励するものです。これは、過去の金融機関による「レッドライニング」(特定の地域への融資を拒否すること)を防ぎ、すべての地域社会が公平に金融サービスを受けられるようにすることを目的としています。
2023年最終規則とは何だったのか?
2023年に発表された最終規則は、この地域再投資法を現代の金融環境に合わせて更新しようとする試みでした。主な変更点としては、以下のようなものが含まれていました。
- 融資、投資、サービス提供の評価基準の見直し: 金融機関が行う地域貢献活動を、より具体的かつ測定可能な基準で評価しようとするものでした。
- デジタルバンキングへの対応: オンラインバンキングなど、デジタルチャネルを通じた地域への貢献も評価対象に含めることが検討されていました。
- データの提出方法の変更: 金融機関が地域貢献に関するデータを当局に提出する方法を、より効率的で統一的なものにしようとするものでした。
- 大規模金融機関と中小規模金融機関のルールの違い: 金融機関の規模に応じて、評価基準や報告義務に違いを設けることが盛り込まれていました。
この規則は、金融機関が地域社会に対してより責任ある行動を促し、同時に地域社会の多様なニーズに応えることを目指していました。
なぜ廃止提案が出されたのか?
今回の「2023年最終規則」の廃止提案の背景には、いくつかの要因が考えられます。発表によると、この提案は、「この法律の目的を達成するために最も効果的なアプローチに関する当局間の継続的な議論と、今後も地域再投資法の実施において強力な監督を維持する必要性」に基づいているとされています。
これは、2023年の規則が、当初の目的を達成する上で必ずしも最適ではなかった、あるいは、現代の金融システムの複雑さを十分に反映できていなかった可能性があることを示唆しています。また、金融機関やその他の関係者からのフィードバックを受けて、より良い方法を模索している段階とも考えられます。
今後の展望は?
今回の廃止提案は、地域再投資法が今後どのように運用されていくかについて、新たな議論を呼び起こすでしょう。当局は、この法律の本来の目的である「地域社会への金融サービス提供の促進」を維持しながらも、現代の金融環境に適合した、より実効性のある規則を策定しようとしていると考えられます。
どのような新しい規則が提案されるのか、あるいは既存の規則に戻るのか、その詳細はまだ明らかではありません。しかし、この動きは、金融機関が地域社会とどのように関わり、その貢献がどのように評価されるかという、重要な政策課題に光を当てるものです。今後、当局はパブリックコメントを受け付け、国民や関係者の意見を聞きながら、地域再投資法のより良い未来を模索していくことになります。
この「2023年最終規則」の廃止提案は、地域社会への金融アクセスを確保し、経済的な公平性を促進するための地域再投資法の重要性を改めて浮き彫りにしています。今後の当局の動きに注目が集まります。
Agencies issue joint proposal to rescind 2023 Community Reinvestment Act final rule
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