イギリス、F-35A導入で「核の二重能力」復活へ ～空からの核抑止力を強化～
イギリスの国防専門メディア「UK Defence Journal」が2025年7月14日に報じたところによると、イギリスは将来的に最新鋭戦闘機「F-35A」の調達を進めることで、核抑止力の基盤となる「核の二重能力（Nuclear Dyad）」を復活させる見込みです。この動きは、イギリスの安全保障戦略における重要な一歩と注目されています。
「核の二重能力」とは？
「核の二重能力」とは、国家が核攻撃を行うための手段として、少なくとも二つの異なるプラットフォーム（例えば、潜水艦発射型弾道ミサイルと、陸上配備型ミサイルや航空機など）を保有することを指します。これにより、敵国が一方のプラットフォームを無力化できたとしても、もう一方のプラットフォームから核攻撃を行うことが可能となり、抑止力が高まります。
現在、イギリスは主に「トライデントII（D5）」弾道ミサイルを搭載した「ヴァンガード級」原子力潜水艦によって核抑止力を維持しています。これは、海洋からの核攻撃能力を持つ「核の単一能力（Nuclear Monad）」とも言えます。
F-35A導入の意義
今回、イギリスがF-35A（通常、アメリカ空軍などが使用する空軍仕様のF-35）の調達を検討している背景には、この「核の二重能力」を復活させ、核抑止力をさらに強固にしたいという思惑があります。F-35Aは、ステルス性能に優れ、高度な情報収集・分析能力、そして長距離攻撃能力を持つ最新鋭の戦闘機です。
もしイギリスがF-35Aに核兵器を搭載する能力を付与した場合、以下の点で大きな意義があります。
- 空からの核抑止力の回復: イギリスは過去に、核兵器搭載可能な爆撃機を保有していましたが、その能力は維持されていませんでした。F-35Aの導入は、潜水艦だけではない、空からの核攻撃能力を再び獲得することを意味します。これにより、敵国は潜水艦の動向だけでなく、航空機による核攻撃の可能性も常に警戒する必要が出てきます。
- 抑止力の多様化と信頼性向上: 複数のプラットフォームを持つことで、核抑止力の信頼性が一層向上します。敵国は、あらゆる状況下でイギリスが核攻撃を行う能力を有していることを認識し、攻撃を躊躇する可能性が高まります。
- 将来的な安全保障環境への対応: 国際情勢が不安定化する中で、多様な脅威に対処できる能力を維持することは不可欠です。F-35Aは、核抑止力のみならず、通常戦力としても高い能力を持つため、イギリスの総合的な防衛力を向上させることも期待されています。
課題と今後の展望
F-35Aの調達は、その先進性ゆえに高額な費用がかかることが予想されます。また、核兵器をF-35Aに搭載するための改修や、それに伴う運用体制の構築なども必要となるでしょう。
しかしながら、イギリス国防省は、安全保障環境の変化に対応し、国家の核抑止力を将来にわたって維持するために、F-35Aの調達を通じて「核の二重能力」を復活させる方針であると見られています。この決定が実現すれば、イギリスの安全保障戦略において、核抑止力のあり方を大きく変える歴史的な一歩となることは間違いありません。
今後のイギリス政府の具体的な発表や、F-35Aの配備計画、そして核兵器搭載に向けた開発状況などに注目が集まります。
UK to restore nuclear dyad with F-35A procurement
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