欧州議会、レアアース輸出規制を巡り中国への対応強化を求める ～EUの経済安全保障の鍵となる戦略的鉱物～
2025年7月10日、欧州議会は「プレスリリース – 欧州委員会はレアアースの輸出規制に取り組むべき」と題する発表を行い、中国によるレアアースの輸出規制に対して、欧州委員会がより積極的な対応を取るよう強く求めました。この発表は、現代社会において不可欠な様々なハイテク製品の製造に欠かせないレアアースの安定供給と、EUの経済安全保障戦略における重要な課題を浮き彫りにしています。
なぜレアアースは重要なのか？
レアアースは、その名の通り地球上に豊富に存在するわけではありませんが、そのユニークな磁気的・電気的・光学的特性から、現代社会を支える多くの先端技術に不可欠な素材です。
- 電気自動車（EV）と風力発電: EVのモーターや風力タービンの発電機には、強力な磁石を作るためにレアアースが大量に使用されています。
- スマートフォンとコンピューター: スマートフォンのスピーカーやディスプレイ、コンピューターのハードディスクなど、身近な電子機器にも不可欠です。
- 医療機器: MRIなどの高度な医療機器にも、その性能を支えるためにレアアースが利用されています。
- 防衛産業: ミサイル誘導システムや戦闘機など、最先端の軍事技術においてもレアアースは重要な役割を果たしています。
これらの技術への依存度が高まるにつれて、レアアースの安定供給は、EU諸国の経済成長と安全保障にとって、ますます重要な要素となっています。
中国の輸出規制とその影響
中国は、世界のレアアース生産量の大部分を占める主要な輸出国です。これまでも中国は、環境保護や国内産業保護などを理由に、レアアースの輸出に関する規制を強化したり、輸出 quotas（割当数量）を設定したりしてきました。
欧州議会が今回、欧州委員会に対応を求めた背景には、こうした中国の輸出規制がEUのサプライチェーンに与える潜在的なリスクへの懸念があります。もし中国が輸出を制限したり、価格を操作したりすれば、EU域内のハイテク産業は深刻な影響を受け、競争力が低下する可能性があります。これは、再生可能エネルギーへの移行やデジタル化の推進といったEUの戦略的な目標達成にも障害となりかねません。
欧州議会が求める具体的な対応
今回のプレスリリースでは、欧州委員会に対して以下のような具体的な行動を求めています。
- 中国との対話の強化: 中国政府と積極的に対話し、輸出規制の緩和や透明性の向上を求めること。
- 代替供給源の確保: 中国以外からのレアアースの調達先を多様化し、サプライチェーンのリスクを低減すること。これには、EU域内での探査・採掘・精製能力の向上や、オーストラリア、カナダ、アメリカなどの友好国との連携強化が含まれます。
- EU域内でのリサイクルの推進: 使用済み製品からのレアアースのリサイクル技術開発とビジネスモデル構築を支援し、循環型経済を促進すること。
- 戦略的パートナーシップの構築: レアアース供給国との強固なパートナーシップを築き、長期的な安定供給を確保すること。
- EUの自主的な供給能力の強化: EU域内でのレアアースの探査、採掘、加工能力を投資や規制緩和によって支援し、自給自足のレベルを高めること。
まとめ
欧州議会の今回の呼びかけは、EUが直面する経済安全保障上の課題、特に戦略的鉱物の安定供給がいかに重要であるかを示しています。レアアースへの依存度が高い現代社会において、一つの国に頼るサプライチェーンは大きなリスクをはらんでいます。欧州委員会がこの課題にどのように取り組み、EUの経済と技術的な未来を守るための実効的な対策を打ち出していくのか、今後注目が集まります。
Press release – Commission must tackle China’s export restrictions on rare earth elements
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