善良な市民を守る法律か？「資格免除の撤廃法案」とは何か
2025年6月29日、アメリカ合衆国連邦政府の情報提供サイト「govinfo.gov」で、新たな法案「H.R. 3602 (IH) – Ending Qualified Immunity Act」が公開されました。「資格免除の撤廃法案」と訳されるこの法律は、公共の安全を守るために日夜働く公務員、特に警察官などが、その職務遂行中に犯した過ちに対して、より責任を問われやすくすることを目的としています。
「資格免除」とは、そもそも何なのでしょうか？
これは、公務員が、憲法で保障されている権利を侵害するような行為をしたとしても、その行為が「確立された権利」に違反しない限り、訴訟から免責されるという考え方です。つまり、法律で明確に「これはダメですよ」と定められていない限り、たとえ市民の権利を侵害するような行動をとったとしても、公務員は訴えられる心配が少ない、という制度でした。
この制度は、公務員が職務を遂行する上で、不必要な訴訟リスクに怯えることなく、積極的に行動できるようにするために設けられたと考えられています。もし訴訟を恐れてばかりいたら、いざという時に市民を守るための適切な判断を下せない可能性もあるからです。
なぜ「撤廃」が求められているのか？
一方で、この「資格免除」の考え方に対しては、長年、強い批判の声も上がっていました。特に、市民の権利が侵害された場合でも、責任を問われるべき公務員が責任を逃れてしまうケースがある、という指摘です。不当な暴力や差別を受けた市民が、泣き寝入りを強いられる状況は、公平な社会にとって看過できない問題でした。
今回の「資格免除の撤廃法案」は、こうした市民の声を受けて、より厳しい基準で公務員の責任を問うことができるようにしようとする動きと言えます。この法案が成立すれば、公務員は自身の行動が市民の権利を侵害していないかを、より慎重に判断する必要が出てくるでしょう。
この法案が社会に与える影響とは？
この法案が今後どのように進展していくのかは、アメリカ社会にとって非常に重要な意味を持ちます。
- 市民の権利保護の強化: 法案が通過すれば、憲法で保障された市民の権利が、より確実に守られるようになる可能性があります。不当な扱いを受けた人々が、正義を求めるための道が開かれるかもしれません。
- 公務員の職務遂行への影響: 一方で、公務員が訴訟リスクを過度に恐れるようになり、必要な行動がためらわれるようになるのではないか、という懸念も存在します。安全かつ効果的な職務遂行のために、どのようなバランスが取られるのかが注目されます。
- 法制度への影響: 今まで「資格免除」によって守られてきた公務員の立場が変化することで、訴訟のあり方や、公務員に対する法的な責任のあり方にも、大きな影響を与える可能性があります。
「資格免除の撤廃法案」は、公共の安全と個人の権利保護という、二つの重要な価値観の間で、社会がどのようなバランスを求めるのかを示す、重要な一歩と言えるでしょう。今後の審議の行方と、それがアメリカ社会にどのような変化をもたらすのか、注目が集まります。
H.R. 3602 (IH) – Ending Qualified Immunity Act
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