イギリス政府、大切なニュースを守るための新しいルールを発表！～デジタル時代に報道機関を応援～
皆さん、私たちが普段目にしているニュースは、どのようにして作られ、届けられているか考えたことはありますか？新聞社、テレビ局、ニュースサイトなど、たくさんの人が時間と労力をかけて、様々な情報や社会の出来事を私たちに伝えてくれています。
ところが今、世界中で、こうした「ニュースを作る会社（報道機関）」が、経営の面で大変な課題に直面しています。その大きな理由の一つが、インターネットの広がりです。
【ニュースの概要】イギリス政府が発表した大切な一歩
イギリス政府は、2024年5月14日の深夜（イギリス時間23:01）に、「メディア法改正で報道の持続可能性を向上させ、独立性を保護する（Media law reforms to boost press sustainability and protect independence）」というタイトルのニュースを発表しました。
これは簡単に言うと、「デジタル化が進む今の時代に、イギリスの大切なニュースをこれからも守り、届け続けてもらうために、新しいルールを作りますよ」という、とても大事なお知らせです。
なぜ今、新しいルールが必要なの？～報道機関が直面する課題～
インターネット、特にGoogleのような検索サイトや、Facebook、X（旧Twitter）のようなSNSなど、「オンラインプラットフォーム」と呼ばれる大きな会社を通じてニュースを読むことが、当たり前になりました。
これは私たちにとっては便利になったのですが、ニュースを作る側には次のような問題が起きています。
- 広告収入の問題: ニュースサイトには広告が表示されますが、多くの人がオンラインプラットフォーム経由でニュースを読むため、広告収入の多くがプラットフォーム側に行ってしまい、ニュースを作った報道機関には十分に還元されない、という状況が生まれています。
- 交渉力の差: オンラインプラットフォームは非常に大きな力を持っています。報道機関は、自分たちのニュース記事がプラットフォーム上でどのように表示されるか（検索結果の上位に来るか、フィードで目立つかなど）や、その利用条件について、プラットフォームと対等に話し合うのが難しい状況がありました。
- 経営の不安定化: 収入が減り、デジタル化への対応にもコストがかかるため、特に地域の情報を伝えるローカルメディアなど、多くの報道機関が経営的に厳しい状況に置かれています。
このような状況が続くと、十分な取材ができなくなったり、ジャーナリストを雇えなくなったりして、結果的に私たちが受け取るニュースの質が下がってしまう恐れがあります。また、経済的に苦しくなると、政府や大企業の意向に左右されてしまい、独立した立場で真実を報じることが難しくなる心配もあります。
新しいルールの内容：オンラインプラットフォームともっと公平に！
イギリス政府が今回発表した新しいルールは、主に「デジタル市場、競争、消費者に関する法律（Digital Markets, Competition and Consumers Bill）」という、すでに議会で議論されている法律の枠組みの中で進められます。
このルールの中心的な考え方は、「オンラインプラットフォームとニュースを作る報道機関の間で、もっと公平な関係を築きましょう」というものです。
具体的には、イギリスの競争市場庁（CMA）という、市場の公正さを守るための政府機関の中に設置された「デジタル市場部門（DMU）」が、大きな力を持つ一部のオンラインプラットフォーム（「戦略的市場地位」を持つと指定された企業）に対して、次のようなことができるようになります。
- 行動規範（Code of Conduct）の設定: プラットフォームが、ニュースパブリッシャー（報道機関）に対して、どのようなルールでコンテンツを扱い、どのような条件で取引するかについて、公正で合理的な行動をとるように求める規範を定めることができます。
- 公正な条件での交渉の促進: プラットフォームがニュースコンテンツを利用すること（検索結果に表示したり、フィードに載せたりすることなど）に関する対価や条件について、報道機関と公平な立場で交渉するように促します。もし交渉がうまくいかない場合は、DMUが仲介に入ったり、必要に応じて強制力のある決定を下したりする権限を持つことが想定されます。
- 情報の透明化や技術的な障壁の排除: プラットフォームが、ニュースコンテンツの表示方法や、報道機関が自社サイトに読者を誘導する際に不当な技術的な障壁を設けないように求めることも可能になるでしょう。
これにより、報道機関は、自分たちの価値あるニュースコンテンツがオンライン上で利用されることに対して、より適正な対価を受け取ったり、プラットフォーム上での表示方法などについて、よりフェアな扱いを受けたりできるようになることが期待されています。
なぜこれが私たちの生活に関わるの？～質の高い報道と民主主義～
この法改正は、単に報道機関のビジネスを助けるだけでなく、私たち市民にとっても非常に重要です。
- 質の高いジャーナリズムが守られる: 経営が安定すれば、報道機関は十分な資金をかけて、深く掘り下げた調査報道や、正確な事実確認（ファクトチェック）を行うことができます。これにより、私たちは信頼できるニュースを受け取ることができます。
- 多様な情報源が守られる: 大手のメディアだけでなく、地域の小さなメディアも経営を続けやすくなり、地域ならではの大切な情報（地域のイベント、行政の動き、身近な問題など）が報じられ続けることにつながります。
- 報道の独立性が保たれる: 経済的な自立性が高まることで、報道機関は政府や力を持つ組織からの不当な圧力に屈することなく、権力をチェックし、社会の課題を勇敢に報じることができます。これは、健全な民主主義を維持するために欠かせないことです。
世界の動きと今後の見通し
オンラインプラットフォームと報道機関の関係性を巡る問題は、イギリスだけでなく世界中で起きています。オーストラリアやカナダでは、すでにオンラインプラットフォームに対して、ニュースコンテンツの利用について報道機関に適切な対価を支払うよう義務付ける法律が導入されており、今回のイギリスの動きも、こうした国際的な流れの一つと言えます。
今後、イギリスでこの新しいルールが実際にどのように運用され、報道機関やオンラインプラットフォームがどのように対応していくのか、注目が集まります。
まとめ
イギリス政府が今回発表した法改正に向けた動きは、デジタル化が進んだ現代において、「信頼できるニュース」を作り届ける報道機関を応援し、何よりも「独立した質の高いジャーナリズム」を守るための大切な一歩です。
私たちがこれからも、正確で多様な情報を得て、社会について深く考え、より良い未来を築いていくために、この新しいルールがうまく機能することが期待されます。このニュースは、私たちが普段何気なく読んでいるニュースの裏側にある、大きな変化と、私たちの社会にとってのジャーナリズムの大切さを改めて教えてくれていると言えるでしょう。
Media law reforms to boost press sustainability and protect independence
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