ポートスーダンへのドローン攻撃、民間インフラへの被害に国連専門家が懸念表明
2025年5月19日、国連人権高等弁務官事務所（OHCHR）の独立専門家であるジェームズ・アノルド氏は、スーダン北東部の港湾都市ポートスーダンにおける民間インフラへのドローン攻撃について、強い懸念を表明しました。アノルド氏は、こうした攻撃が国際人道法に違反する可能性があり、市民の生活に深刻な影響を与えていると指摘し、即時停止を求めています。
攻撃の現状と影響
アノルド氏によると、ポートスーダンでは、スーダン軍と準軍事組織「即応支援部隊（RSF）」との間の激しい戦闘が続いており、その中で複数のドローン攻撃が発生しています。これらの攻撃は、病院、学校、市場、住宅地といった民間施設を標的としていると報告されています。
これらの攻撃により、インフラの破壊だけでなく、多くの市民が犠牲になったり負傷したりしています。食料、水、医療品などの供給が滞り、人道状況は悪化の一途をたどっています。特に、医療施設への攻撃は、負傷者の治療を困難にし、医療システムの崩壊を招く恐れがあります。
国際人道法の観点からの懸念
アノルド氏は、国際人道法では、紛争当事者は民間人や民間施設を攻撃から保護する義務を負っていると強調しました。意図的に民間インフラを攻撃すること、あるいは民間人と軍事目標を区別せずに攻撃することは、重大な国際法違反となり得ます。
また、攻撃が「比例性」の原則に反している可能性も指摘されています。比例性とは、軍事目標に対する攻撃によって生じる民間人の死傷や民間施設の損害が、期待される具体的な軍事上の利益と比較して過度であってはならないという原則です。現在の攻撃がこの原則を満たしているかどうかも、今後の検証の焦点となるでしょう。
国連専門家からの呼びかけ
アノルド氏は、スーダンにおけるすべての紛争当事者に対し、以下の点を強く求めています。
- 民間インフラへの攻撃の即時停止: 市民の生命と生活を守るため、あらゆる民間施設への攻撃を直ちに中止すること。
- 国際人道法の遵守: スーダン紛争のすべての関係者は、国際人道法、特に民間人と民間施設の保護に関する規定を厳格に遵守すること。
- 人道アクセスの確保: 紛争地域への人道支援物資の迅速かつ安全なアクセスを保証し、支援活動を妨げないこと。
- 独立した調査: 同様の攻撃が発生した場合、その責任を追及するために、独立した公正な調査を実施すること。
背景と今後の展望
スーダンでは、2023年4月以降、スーダン軍とRSFとの間で激しい戦闘が続いており、多くの市民が犠牲になっています。この紛争は、アフリカ有数の人口を持つ国に深刻な人道危機をもたらしています。
今回のポートスーダンへのドローン攻撃に関する国連専門家の声明は、紛争の長期化と、それによって民間人が直面する過酷な状況を改めて浮き彫りにしました。国際社会は、スーダンにおける平和的な解決に向けた努力をさらに強化するとともに、紛争当事者に対し、国際法を遵守し、人道状況の改善に責任を果たすよう、より一層の圧力をかけていく必要があります。
アノルド氏の懸念表明は、スーダンにおける人権状況の悪化に対する国際社会の関心を高め、紛争の終結と平和の回復に向けた行動を促すものとして、重要な意味を持っています。
Drone strikes on civilian infrastructure in Port Sudan must end: UN expert
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